導入した当初、私には明確な線引きがあった。ここから先は自分でやる、ここまでは任せてもいい。その線は、最初は驚くほど内側に引かれていた。
線を引いていた場所
4月に導入した頃、私が任せていたのは本当に小さな作業だった。ファイルの一部を書き換える、決まった形式の文章を整える、その程度だった。判断が必要な部分、複数の選択肢がある部分は、必ず自分で最後に見てから決めていた。それが安全だと思っていたし、実際そうする理由もあった。何が返ってくるか、まだ肌感覚で分かっていなかったからだ。
線引きの基準は「失敗したときに取り返しがつくかどうか」だった。取り返しがつく範囲だけを任せて、少しずつその範囲を広げていく。そうやって様子を見ながら進めていたのを覚えている。
境界が動き始めた頃
5月の終わりから6月にかけて、その線が少しずつ動き始めた。きっかけは特別な出来事があったわけではなく、任せた範囲がうまくいくことが積み重なった結果だったと思う。最初は結果だけを見て安心していたが、次第に途中の判断のつけ方にも目が向くようになった。どういう理由でその選択をしたのか、それを見ているうちに、任せられる範囲の輪郭が変わっていった。
このあたりから、複数のアプリ開発を並行して進める場面でも、細かい指示を毎回書くのではなく、大きな方向性だけを伝えて、具体的な進め方は委ねるようになった。以前なら「ここはこうしてほしい」と一つひとつ書いていたところを、「この方向で進めてほしい」とだけ伝えて、後から結果を確認する形に変わっていった。
今、振り返って気づくこと
7月に入ってからは、任せる範囲の広さそのものより、任せた後にどこを確認するかの方に意識が向くようになった。全部を見るのではなく、要点だけを見る。それができるようになったのは、任せる範囲が広がったからというより、何を見れば十分かが分かってきたからだと思う。
今日、4月の頃の自分がどこに線を引いていたかを思い出すと、その位置の低さに少し驚く。あの頃は、今任せている範囲を想像すらしていなかった。線が動いたことに気づいたのは、動いている最中ではなく、こうして振り返っているときだった。